福祉サービス利用援助事業って、どんな制度?
「福祉サービスを利用したいけれど、手続がよく分からない」
「役所から届いた書類を、どうすればよいのか分からない」
「生活費の管理や支払いに不安がある」
こうしたときに、本人の意思を尊重しながら、福祉サービスの利用や日常生活を支える仕組みの一つが 「福祉サービス利用援助事業」です。
現在は、社会福祉協議会が実施する「日常生活自立支援事業」の中で、福祉サービスの利用援助、 日常的な金銭管理、定期的な訪問などが行われています。
そして2026年の社会福祉法改正では、この事業を拡充し、頼れる身寄りがいない高齢者等への支援や、 入院・入所等の手続、死後事務にも支援を広げることになりました。
この記事では、現在の制度から2026年改正で何が変わるのかまで、順番に見ていきます。
福祉サービス利用援助事業とは?
「福祉サービス利用援助事業」は、社会福祉法に定められている 第二種社会福祉事業です。
現在の社会福祉法では、精神上の理由によって日常生活を営むことに支障がある人に対し、 福祉サービスを利用するための相談・助言や必要な手続、費用の支払いなどを一体的に支援する事業として定められています。
なぜ「社会福祉法」に定められているの?
福祉サービスには、高齢者福祉、障害福祉などさまざまな分野があります。 しかし、どの分野のサービスを利用する場合でも、本人が必要な情報を理解し、サービスを選び、手続をすることが難しい場合があります。
利用者自身が福祉サービスを選ぶ仕組みにするのであれば、 自分だけで選ぶことが難しい人にも、その「選ぶこと」自体を支える仕組みが必要です。
そのため、特定の福祉分野だけではなく、福祉サービスを適切に利用するための共通の仕組みとして、 社会福祉法に「福祉サービス利用援助事業」が位置付けられています。
社会福祉法では、この事業を行う際には、 利用者の意思決定の支援に配慮し、その意向を十分に尊重することも定めています。
現在は「日常生活自立支援事業」として行われています
現在、都道府県・指定都市社会福祉協議会を実施主体として行われているのが 「日常生活自立支援事業」です。窓口業務などは、市町村社会福祉協議会等でも行われています。
現在の主な対象は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な人で、 同時にこの事業の契約内容を判断できる能力がある人です。
支援内容には、福祉サービスの利用援助のほか、日常的な金銭管理や行政手続に関する援助、定期的な訪問などがあります。 本人に代わって何でも決めるのではなく、本人の意思を尊重しながら地域での生活を支える制度です。
「福祉サービス利用援助事業」と「日常生活自立支援事業」は違うの?
二つの名前が出てくるのには、制度の歴史が関係しています。
1999年に「地域福祉権利擁護事業」として始まりました
現在の日常生活自立支援事業につながる仕組みは、1999年10月に 「地域福祉権利擁護事業」として始まりました。
その後、2000年の社会福祉法施行によって「福祉サービス利用援助事業」が第二種社会福祉事業として法律に位置付けられ、 2007年には国の事業名が「日常生活自立支援事業」に変更されました。
分かりやすく整理すると、「福祉サービス利用援助事業」は社会福祉法上の名称、 「日常生活自立支援事業」は現在、社会福祉協議会が実施している事業の名称です。
利用する際には、本人の生活状況や希望する支援を確認して支援計画を作り、本人との契約に基づいて支援が行われます。
成年後見制度とは何が違うの?
日常生活自立支援事業とよく比較されるのが成年後見制度です。 どちらも判断能力に不安のある人を支える仕組みですが、制度の目的や支援できる範囲が異なります。
法定後見制度との違い
日常生活自立支援事業は、本人と社会福祉協議会との契約によって利用します。 支援の中心は福祉サービスの利用援助、日常的な金銭管理、書類の預かりなどです。 預金の払戻しなど限定的に本人を代理する場合もありますが、本人が行った法律行為を取り消す権限はありません。
これに対して法定後見制度は、本人の判断能力に応じて家庭裁判所が後見人・保佐人・補助人を選任する制度です。 後見人等には、その類型や家庭裁判所の審判に応じて、代理権や取消権・同意権などが認められます。
任意後見制度との違い
任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに、 「将来、判断能力が低下したときに、誰に、どのようなことを任せるか」をあらかじめ決めておく制度です。
任意後見契約は公正証書で結び、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると効力が生じます。 任意後見人は契約で定められた範囲で本人を代理できますが、本人が行った契約などを取り消す権限はありません。
どちらか一つを選ぶ制度ではありません
日常生活自立支援事業と成年後見制度は、「こちらが軽い制度で、判断能力が低下したら必ず成年後見制度へ移る」という単純な関係ではありません。 本人の判断能力や必要な支援、財産管理の内容などによって、適した制度は異なります。
なぜ2026年に制度を広げることになったの?
これまで、入院や施設への入所、緊急時の連絡、亡くなった後の手続などは、家族や親族が担うことが少なくありませんでした。 しかし、単身世帯等が増える中で、頼れる家族や親族がいない人にとって、こうした手続そのものが生活上の大きな課題になっています。
民間サービスだけでは支援が届かない人もいます
こうしたニーズに対応するものとして、民間の「高齢者等終身サポート事業」もあります。 一方で、サービスによっては一定の費用が必要になるため、十分な資力がない人には利用しにくい場合があります。
そこで、資力が十分でない人にも必要な支援が届く仕組みを整えることが、今回の改正の目的の一つになっています。
成年後見制度の見直しとも関係しています
国では成年後見制度そのものの見直しが進められる一方、成年後見制度だけですべてを支えるのではなく、 地域における成年後見制度以外の権利擁護支援も充実させる必要があるとされています。
2026年改正で何が変わるの?
2026年の社会福祉法改正では、現在の「福祉サービス利用援助事業」を拡充し、名称も 「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」に変わります。
「頼れる身寄りがいない高齢者等」も対象に
現在の日常生活自立支援事業は、主に判断能力が不十分な人を対象としています。 改正後は、これに加えて、厚生労働省の説明では「頼れる身寄りがいない高齢者等」への支援が想定されています。
ただし、「身寄りがない人なら誰でも利用できる」という意味ではありません。 改正法では、近隣に居住する家族がいないことなどの理由により、日常生活または社会生活を営むことに支障がある 「生計困難者」などが対象として規定されています。具体的な利用要件は今後の制度運用を確認する必要があります。
支援は大きく3つに広がります
改正後の事業では、現在の制度を引き継ぐ「日常生活支援」に加えて、 「入院・入所等の手続支援」または「死後事務支援」を行う仕組みになります。
① 日常生活支援
福祉サービスの利用手続、日常的な金銭管理、重要書類の預かり、定期的な見守りなどです。
② 入院・入所等の手続支援
入退院・入退所の手続への立会いや付添い、緊急連絡先の提供、入院費用の支払代行などです。
③ 死後事務支援
葬儀・火葬、納骨、家財処分についての契約手続の支援や契約が履行されたことの確認、行政機関への届出、公共料金関係の連絡などが想定されています。
今回の改正で重要なのは、判断能力だけに着目するのではなく、 頼れる人がいないことで生じる生活上の困りごとにも支援を広げることです。
利用料金はどうなるの?
新しい「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」は、すべての人が無料で利用できる制度ではありません。 原則として利用料を支払い、その利用料収入によって事業を運営する仕組みが想定されています。
資力が十分でない人には無料・低額の仕組みがあります
事業者には、利用者のうち一定割合以上の人に対して、無料または低額の料金でサービスを提供することが求められる方向です。 ただし、誰が対象になるのかについては、まだ具体的に決まっていません。
厚生労働省は、所得だけでなく資産も含めて資力要件を検討する考えを示しており、今後ガイドライン等で具体化される予定です。
無料・低額の対象でなくても利用できる可能性があります
無料・低額の対象にならないからといって、制度そのものを利用できないという意味ではありません。 国会では、資力の観点から無料・低額の対象にならない人についても、事業者と契約すれば資力にかかわらずサービスを受けることが可能との説明がされています。
無料・低額分を国が自動的に補填する仕組みではありません
新しい事業は、無料・低額で利用する人への支援に必要な費用も含め、利用料収入で運営することが原則とされています。 社会福祉協議会以外の民間事業者については、現時点で国は公費による支援を予定していないと説明しています。
誰がこの事業を行えるの?
現在の日常生活自立支援事業は、都道府県・指定都市社会福祉協議会を実施主体として行われています。 一方、2026年改正による新しい事業は、第二種社会福祉事業として、 社会福祉協議会だけでなく、多様な主体が参画できる仕組みになります。
社会福祉法人だけに限られるわけではありません
第二種社会福祉事業は、第一種社会福祉事業とは異なり、原則として経営主体に制限がありません。 新しい事業についても国会で、事業の経営主体には制限を設けず、幅広い主体の参加を期待するとの説明がされています。
届出をすれば、それだけでよいわけではありません
新しい事業を行う場合には、都道府県知事への届出が必要になります。 また、都道府県知事には、必要に応じて事業経営の状況を調査し、事業の制限や停止を命じる権限があります。
私たちのような一般社団法人は?
新しい事業は経営主体を社会福祉法人などに限定していないため、 「一般社団法人だから対象外」という制度ではありません。
ただし、現時点で「一般社団法人 おひとり様尊厳ある終活相談所が、この事業を実施できることが確定した」とまでは言えません。 具体的な実施体制や運用上の要件は、今後示されるガイドライン等を確認する必要があります。
高齢者等終身サポート事業とは違うの?
入院・入所の手続や死後事務を支援すると聞くと、民間で行われている「高齢者等終身サポート事業」と同じように感じるかもしれません。 実際、支援内容には重なる部分があります。
ただし、高齢者等終身サポート事業は、身元保証等、日常生活支援、死後事務などを提供する民間事業を政府のガイドラインで整理したもので、 「高齢者等終身サポート事業」という一つの社会福祉事業が法律に定められているわけではありません。
一方、2026年改正で拡充される「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」は、 社会福祉法に位置付けられる第二種社会福祉事業です。
「緊急連絡先」と「身元保証」も同じではありません
新しい事業では、入院・入所等の支援として緊急連絡先の提供などが想定されています。 ただし、緊急連絡先になることと、入院費などについて連帯保証をする身元保証等は同じではありません。
いつから始まるの?
新しい「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」に関する改正は、 公布の日(2026年6月25日)から2年を超えない範囲内で、政令で定める日から施行されることになっています。
「2027年4月1日から新しい事業が始まる」とは限りません。
まだ決まっていないこともあります
法律によって新しい事業の大きな枠組みは決まりましたが、無料・低額で利用できる人の具体的な資力要件、利用料金、 契約や判断能力に関する具体的な運用、死後事務の範囲、事業者に求められる実施体制などには、今後示されるものがあります。
現時点では、法律で決まったことと、これから政令・ガイドライン等で具体化されることを分けて考えることが大切です。
まとめ|「頼れる人がいない」を社会の仕組みで支えるために
福祉サービス利用援助事業は、本人の意思を尊重しながら、福祉サービスの利用や日常生活を支えてきた制度です。
2026年の社会福祉法改正では、この仕組みを「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」へ拡充し、 判断能力が不十分な人だけでなく、頼れる身寄りがいない高齢者等への支援も視野に入れ、入院・入所等の手続や死後事務にも支援を広げることになりました。
大切なのは「身寄りがあるか、ないか」だけではありません。 一人ひとりが何に困っているのか、どのような支援を必要としているのかを確認し、成年後見制度や高齢者等終身サポート事業なども含めて、適切な支援につなげていくことが必要です。
私たちも今後の制度の動きを確認しながら、 おひとり様が「頼れる人がいない」という理由だけで必要な支援から取り残されないために、どのような支援ができるのかを考えていきます。
参考資料・情報について
この記事は、2026年9月時点の社会福祉法、2026年改正法、厚生労働省資料、国会審議資料、 政府の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」等をもとに作成しています。
新しい「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」には、具体的な施行日や利用要件、料金、運用方法など、 今後政令やガイドライン等で明らかになる事項があります。制度を実際に利用する際には、厚生労働省などが公表する最新情報をご確認ください。
厚生労働省「日常生活自立支援事業」
厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律」概要資料
消費者庁「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」
本記事の作成にあたっては、資料の整理、構成の検討、文章表現の補助などに生成AIを利用しています。
ただし、制度に関する記載については、厚生労働省の公表資料や法令、国会審議資料等の一次資料を確認しながら作成しています。
更新履歴
2026年8月18日 公開