福祉には、いろいろな「支えるところ」があります
「社会福祉法人」「社会福祉協議会」「福祉事務所」。
どれも福祉に関係する言葉ですが、名前がよく似ているため、 「何が違うの?」「社会福祉協議会って、市役所なの?」「福祉事務所って、市役所の福祉課のこと?」 と思う方もいるのではないでしょうか。
実は、この3つは同じ種類のものではありません。
社会福祉法人は「法人の種類」、 社会福祉協議会(社協)は「地域福祉を進める組織」、 そして福祉事務所は「行政機関」です。
この記事では、それぞれがどのようなところなのか、そして困ったときにどこへ相談すればよいのかを、順番に見ていきます。
まずは3つの違いを簡単に
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に基づいて設立される法人です。
社会福祉協議会(社協)は、地域福祉を進めることを目的とする組織です。 住民や地域のさまざまな関係者と協力しながら、その地域の福祉を支えています。
そして福祉事務所は、社会福祉法に基づいて設置される行政機関です。 厚生労働省は「第一線の社会福祉行政機関」と説明しています。
名前は似ていますが、それぞれ立場も役割も違います。
社会福祉法人って、どんな法人?
「社会福祉法人」という名前は、老人ホームや保育所、障害福祉施設などで目にすることがあります。
社会福祉法では、社会福祉法人を、 「社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人」 と定めています。
社会福祉事業には、社会福祉法に定められた「第一種社会福祉事業」と「第二種社会福祉事業」があります。 また、社会福祉法人は社会福祉事業だけでなく、一定の条件のもとで公益事業や収益事業を行うこともできます。
社会福祉法人は、誰でも自由につくれるの?
社会福祉法人は、単に登記をすれば設立できる法人ではありません。
設立するには定款を作成し、所轄庁の認可を受ける必要があります。 また、社会福祉事業を行うために必要な資産を備えることなども求められています。
社会福祉事業の主たる担い手として、福祉サービスの質を高めることや、事業運営の透明性を確保することなども社会福祉法で求められています。
社会福祉事業は、社会福祉法人しかできないの?
ここは誤解しやすいところです。
すべての社会福祉事業を、社会福祉法人だけが行うわけではありません。
社会福祉事業には第一種と第二種があり、事業の種類や個別の法律によって、事業を行うことのできる主体についてのルールが異なります。
ですから、「社会福祉事業=すべて社会福祉法人が運営するもの」と考えないようにしましょう。
社会福祉協議会(社協)って、どんなところ?
社会福祉協議会は、一般に「社協(しゃきょう)」と呼ばれています。
社会福祉法では、市町村社会福祉協議会について、社会福祉を目的とする事業の企画・実施、住民参加の援助、調査・連絡・調整などを行い、 地域福祉の推進を図ることを目的とする団体として位置づけています。
全国社会福祉協議会の「社会福祉協議会 基本要項2025」でも、社協は「住民主体」の理念に基づき、 住民や地域の関係者との協働によって地域福祉を進めることを使命としています。
「社会福祉法人」と「社協」は同じもの?
ここが特に分かりにくいところです。
社会福祉法人は「法人の種類」を表す言葉です。
一方、社会福祉協議会は「地域福祉を進める組織」を表す言葉です。
市町村社会福祉協議会は、社会福祉法第109条により、一定の要件を満たす社会福祉法人として位置づけられています。
つまり、「社協という組織が、社会福祉法人という法人格を持っている」と考えると分かりやすいでしょう。
たとえば「社会福祉法人○○社会福祉協議会」と表示されている場合、 「社会福祉法人」が法人格を、「○○社会福祉協議会」がその組織の名称を表しています。
もちろん、すべての社会福祉法人が社協なのではありません。福祉施設や福祉サービスなどを運営する社会福祉法人も数多くあります。
社協は市役所なの?
社会福祉協議会は、市役所などの行政機関ではありません。
ただし、地域福祉を進めるため、自治体をはじめ、福祉関係者、民生委員・児童委員、ボランティア、住民など、 さまざまな人や組織と連携して活動しています。
そのため、住民から見ると、市役所と社協の違いが分かりにくいこともあります。
社協では、どんなことをしているの?
私たちの暮らしに身近なのが、市区町村社会福祉協議会です。
市区町村社協では、高齢者や障害のある方の在宅生活支援をはじめ、地域のさまざまな福祉ニーズに応じた活動が行われています。
ただし、すべての社協が同じ事業を行っているわけではありません。
それぞれの社協が、地域の特性を踏まえて、さまざまな福祉サービスや独自の事業に取り組んでいます。
「日常生活自立支援事業」も社協が関わっています
前の記事で紹介した「日常生活自立支援事業」も、社協と深い関係があります。
現在、この事業の実施主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会で、窓口業務などは市町村社会福祉協議会等で行われています。
認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な方が地域で自立した生活を送れるよう、 福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理などを行う制度です。
前の記事に何度も「社会福祉協議会」が登場したのは、このためです。
福祉事務所って、市役所のこと?
「福祉事務所」と聞くと、市役所の福祉課のようなところを想像するかもしれません。
実際、市では市役所の組織の中に福祉事務所が置かれていることがあるため、「市役所の福祉の窓口」のように見えることがあります。
しかし、正確には、福祉事務所=市役所ではありません。
福祉事務所は、社会福祉法第14条に規定されている「福祉に関する事務所」で、 厚生労働省は「第一線の社会福祉行政機関」と説明しています。
福祉事務所は、どこにあるの?
都道府県と市(特別区を含みます)には、福祉事務所の設置が義務づけられています。 一方、町村は任意で設置することができます。
そのため、必ず「○○福祉事務所」という独立した建物があるとは限りません。 自治体によって組織の置き方や窓口の名称も異なります。
自分の地域の福祉事務所が分からない場合は、自治体のホームページや市役所・町村役場などで確認するとよいでしょう。
福祉事務所では、何をしているの?
福祉事務所は、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法という、 いわゆる「福祉六法」に定める援護、育成または更生の措置に関する行政事務を担います。
ただし、都道府県の福祉事務所と市町村の福祉事務所では、所管する事務が同じではありません。
たとえば現在、都道府県福祉事務所については、制度改正によって老人福祉・障害者福祉分野の一部の事務が市町村へ移されたため、 主として生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法の三法を所管しています。
ですから、「福祉事務所なら福祉に関することを全部担当している」と考えるのではなく、 相談内容や自治体によって担当する窓口が異なることがあると考えておいた方がよいでしょう。
社会福祉法人・社協・福祉事務所を比べてみよう
ここまで見てきた3つは、名前は似ていますが、そもそも立場が違います。 下の図で関係を整理してみましょう。
| 比較する点 | 社会福祉法人 | 社会福祉協議会(社協) | 福祉事務所 |
|---|---|---|---|
| 何を表す? | 法人の種類 | 地域福祉を進める組織 | 行政機関 |
| 行政機関? | いいえ | いいえ | はい |
| 社会福祉法上の主な位置づけ | 第22条など | 第109条など | 第14条など |
| 主な役割 | 社会福祉事業などを行う | 地域福祉を進める | 法律に基づく福祉行政を担う |
| 市役所との関係 | 市役所とは別の法人 | 市役所とは別の組織 | 市では市役所の組織の中に置かれることがある |
「社会福祉法人」と「社協」は、単純な横並びではありません
この表で一つ注意したいのが、社会福祉法人と社会福祉協議会は、まったく別々のものを横に並べているわけではないということです。
社会福祉法人は法人の種類、社会福祉協議会は地域福祉を進める組織です。 そして市町村社協は、社会福祉法人として活動しています。
これに対して、福祉事務所は行政機関です。
この関係が分かるだけでも、福祉に関する組織がかなり整理しやすくなります。
困ったときは、どこに相談すればいいの?
福祉について困りごとがあっても、「市役所?」「福祉事務所?」「社協?」と、どこへ相談すればよいのか分からないことがあります。
実際の相談窓口は、困りごとの内容や自治体によって異なります。
たとえば生活保護については福祉事務所が重要な窓口になります。 地域での暮らしや福祉に関する相談では、市区町村社協が相談先の一つになることもあります。
また、高齢者については地域包括支援センター、生活困窮については自立相談支援機関など、困りごとに応じた別の相談窓口もあります。
大切なのは、最初から自分で制度名や担当機関を正確に判断しなければ相談できないわけではないということです。
「生活費に困っている」
「一人暮らしを続けられるか不安」
「お金の管理が難しくなってきた」
「介護や住まいのことを相談したい」
「どんな支援を利用できるのか分からない」
このような困りごとを、そのまま伝えるところから始めることができます。
相談先が分からない場合には、市区町村の福祉担当窓口など身近なところに相談し、 必要に応じて適切な制度や専門機関につないでもらうという方法もあります。
まとめ|名前ではなく「役割」を知っておこう
「社会福祉法人」「社会福祉協議会」「福祉事務所」。名前は似ていますが、それぞれ役割が違います。
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として社会福祉法に基づいて設立される法人。
社会福祉協議会(社協)は、地域福祉を進める組織。
福祉事務所は、法律に基づく福祉行政を担う行政機関。
そして、これらの違いをすべて暗記することよりも大切なのは、 「暮らしに困ったときには、相談できるところがある」と知っておくことではないでしょうか。
高齢になって一人での生活に不安を感じたり、お金の管理が難しくなったり、介護、住まい、生活費、身寄りの問題など、 いくつもの困りごとが重なることもあります。
そんなとき、自分で福祉制度をすべて調べて、「自分はこの制度の対象だ」と判断してから相談する必要はありません。
まずは、「こんなことで困っています」と伝えてみる。 そこから必要な制度や支援につながっていくことも、地域の福祉の大切な役割です。
参考資料・情報について
この記事は、2026年9月時点の社会福祉法、厚生労働省および全国社会福祉協議会の公表資料をもとに作成しています。
実際の相談窓口や社協の事業内容、福祉事務所の組織名称などは地域によって異なる場合があります。 利用や相談の際には、お住まいの自治体や社会福祉協議会が公表する最新情報をご確認ください。
厚生労働省「社会福祉法人の概要」
厚生労働省「福祉事務所」
全国社会福祉協議会「社会福祉協議会(社協)」
全国社会福祉協議会「社会福祉協議会 基本要項2025」
本記事の作成にあたっては、資料の整理、構成の検討、文章表現の補助などに生成AIを利用しています。
ただし、制度に関する記載については、厚生労働省の公表資料や法令、全国社会福祉協議会の資料等を確認しながら作成しています。
更新履歴
2026年8月20日 公開