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【介護保険】人口が減る地域の介護サービスをどう守る?

2026年改正で変わる地域の介護

公開日:

人口が減る地域で、介護サービスをどう残す?

「住み慣れた地域で、できるだけ長く暮らしたい」

そう思っていても、地域に訪問介護や通所介護などの事業所がなくなれば、必要な介護サービスを受け続けることは難しくなります。

いま日本では、地域によって人口減少の進み方に大きな違いがあります。これからも介護サービスの需要が増えていく地域がある一方、中山間地域などでは、高齢者人口そのものが減り、介護サービスの利用者も減っていく地域があります。そして同時に、介護を担う働き手も減っていきます。

2026年の法改正では、こうした地域でも必要な介護サービスをできるだけ維持していくため、新しい仕組みが設けられました。その一つが、「特定地域サービス」です。

1.人口が減ると、介護サービスはどうなるの?

人口が減少する地域では、単純に「介護をする人が足りなくなる」という問題だけが起こるわけではありません。

介護サービスを利用する人が少なくなれば、事業所にとっては一定の利用者を確保すること自体が難しくなります。

特に訪問介護では、ヘルパーが利用者の自宅を一軒ずつ訪問します。人口が少ない地域では、利用者の自宅から次の利用者の自宅まで、長い距離を移動しなければならないこともあります。

さらに、予定していた訪問が突然キャンセルになることもあります。

ただし、高齢者への介護サービスでは、本人が望んでキャンセルしているとは限らないのですが、急な体調の変化や受診、入院などによって、事業所側も予定していたサービスを提供できなくなることがあります。

介護を必要とする人の生活には、予定どおりにはいかない出来事もあります。

一方で、事業所側から見ると、理由がやむを得ないものであっても、その時間に予定していたサービスを提供できなければ、事業運営への影響は避けられません。ヘルパーの勤務や訪問予定、移動の調整も必要になります。

厚生労働省も、訪問系サービスでは、利用者の事情による突然のキャンセルや利用者宅間の移動負担などによって、年間を通じた安定的な経営が難しくなることを課題として挙げています。

利用する人には利用する人の事情があり、サービスを届ける側にも、サービスを続けていくための事情があります。

今回の改正を理解するうえで、これは大切な背景の一つです。

2.地域によって、介護を取り巻く状況は違う

人口の多い都市部と、人口減少が進む中山間地域では、介護サービスを取り巻く状況も違います。

厚生労働省は、今後の介護サービス需要の変化について、地域を大きく「大都市部」「一般市等」「中山間・人口減少地域」に分けて考えています。

大都市部では、今後も増える介護需要に対応するためのサービス基盤が必要になります。

一方、中山間・人口減少地域では、今ある介護サービスをどう維持し、確保するかが大きな課題になります。

全国どこでも同じ問題が起きているわけではありません。だからこそ、全国一律の方法だけではなく、地域の状況に応じて介護サービスを支える仕組みが必要になってきました。

3.新しく設けられる「特定地域サービス」

そこで2026年の改正で設けられたのが、「特定地域サービス」です。

これは、中山間・人口減少地域などで介護サービスを維持するため、従来の仕組みよりも地域の実情に応じた運営を可能にするものです。

2026年6月29日の社会保障審議会介護保険部会でも、「特定地域(中山間・人口減少地域)の考え方」が議題として検討されています。

ポイントの一つが、人員配置基準などを地域の実情に応じて柔軟にすることです。

介護サービスには、管理者や専門職の配置、常勤・専従など、サービスの種類に応じた基準があります。これらは、利用者の安全やサービスの質を守るために必要なものです。

しかし、そもそも専門職を確保することが難しい地域では、全国一律の基準をそのまま満たし続けることが、サービスを維持するうえで難しくなる場合があります。

そこで、一定の条件のもとで、地域の実情に応じた柔軟な仕組みを設けようとしているのです。

人口減少地域の介護サービスを維持するための2026年改正の仕組みを示した解説図
2026年改正では、特定地域サービス、介護テクノロジー、報酬の見直し、事業者の連携、市町村が関わる仕組みなどを組み合わせ、地域の介護サービスを支える方向が示されています。

4.「人が足りないから、基準を緩める」という話ではない

ここは少し注意が必要です。

人員配置を柔軟にすると聞くと、「人が足りないから、少ない人数で介護をすればいいということ?」と感じるかもしれません。

しかし、今回示されている方向は、それほど単純なものではありません。

人口減少に対応するためには、人員配置の仕組みだけでなく、介護テクノロジーの活用、タスクシフト・シェア、事業者同士の協働化などを進め、職員の負担を軽減することも必要だとされています。

厚生労働省は、業務の改善や効率化によって生まれた時間を直接的な介護ケアに充て、介護サービスの質の向上につなげるという方向を示しています。

介護テクノロジーについても、ICTなどを含めた技術の開発・導入・定着が進められています。

少ない人数で無理をして支えるのではなく、働く人の負担を減らしながら、限られた人材で必要な介護をどう維持するか。

そこまで含めて考える必要があります。

5.訪問回数だけではなく、「月単位」で評価する仕組みも

今回の見直しでは、介護報酬についても新しい考え方が示されています。

たとえば訪問介護では、サービスを提供した回数などに応じて報酬が支払われる仕組みがあります。

ところが先ほど見たように、人口の少ない地域では利用者宅間の移動負担が大きく、利用者の事情による突然のキャンセルもあります。

そこで、特定地域における新しい仕組みでは、月単位の定額払いなど、包括的に評価する方法を選択できるようにすることが検討されています。

一方で、定額になればそれで問題が解決するわけではありません。

利用者の状態に応じた評価をどうするのか、必要なサービスが適切に提供される仕組みをどう確保するのか、事業者の経営や介護費用全体にどのような影響があるのかなど、検討しなければならないことがあります。

サービスを維持することと、適切な介護を提供すること。その両方をどう成り立たせるかが課題になります。

6.それでも事業者だけでは維持できない地域は?

人員配置や報酬の仕組みを柔軟にしても、すべての地域で民間の介護事業者がサービスを維持できるとは限りません。

そこで今回の改正では、もう一つ、「特定地域居宅サービス等事業」という仕組みも設けられました。

通常の介護サービスだけでは必要なサービスを確保することが難しい地域について、市町村が地域の実情を踏まえながら、サービス提供に関わることのできる仕組みです。

つまり今回の改正では、今ある介護サービスをできるだけ維持する。それが難しい地域では、特定地域サービスという柔軟な仕組みを使う。それでも必要なサービスの確保が難しい場合には、市町村が関与する仕組みも用意する、というように段階的に考えられています。

一つの方法だけではなく、地域の状況に応じて複数の方法を組み合わせていくという考え方です。

7.一つの事業所だけで抱え込まない

もう一つ進められているのが、介護事業者同士の連携です。

人口が減少する地域で、一つひとつの小さな事業所が、人材募集、職員研修、事務作業、ICT導入などをすべて単独で行うことには限界があります。

そこで、複数の事業者が人材確保や研修、事務処理などを協力して行う「協働化」も進められています。

厚生労働省は、小規模な施設・事業所が安定して事業を継続し、地域のサービスを確保するため、協働化・大規模化などによる経営改善を支援しています。

2026年9月18日の介護保険部会でも、「介護事業者の連携強化」が報告事項として取り上げられています。

一つの事業所だけですべてを抱えるのではなく、地域に残っている人材や事業所をつなぎながら介護サービスを維持することも、これから重要になります。

8.テクノロジーを使えば、すべて解決するわけでもない

介護テクノロジーの導入も、人材確保も、事業者同士の連携も重要です。

しかし、人口減少の状況は地域によって違います。利用者の人数も、介護職員の人数も、事業所の数も、移動に必要な距離も違います。

厚生労働省も、高齢化・人口減少の状況や人材供給量には地域差があり、地域固有の課題があることを前提に制度を検討しています。

ですから、新しい制度やテクノロジーを導入すれば、全国どこでも十分な介護サービスを維持できる、とまでは言えません。

だからこそ今回の改正では、人材確保、テクノロジー、事業者間の連携、人員配置や報酬の柔軟化、市町村による支援など、複数の方法を組み合わせようとしています。

9.まだ具体化の途中にあることも

2026年の法改正によって、新しい制度の枠組みは設けられました。

一方、実際に制度を動かすためには、対象となる地域やサービス、人員配置の具体的な基準、報酬の設定など、さらに詰めなければならない事項があります。

2026年6月29日の介護保険部会では、「特定地域サービス」の対象サービスや人員配置基準、包括的な評価の仕組みなどは介護給付費分科会で議論し、「特定地域居宅サービス等事業」についても、その議論を踏まえて制度設計などを検討していく方針が示されています。

法律で決まった制度の枠組みと、これから具体化される運用上の仕組みを分けて考える必要があります。

今後、政省令や介護報酬などが具体化されれば、実際に地域の介護サービスがどのように変わるのかも、より明確になっていきます。

まとめ|地域の介護を残すために、できる方法を組み合わせる

人口が減り、介護を担う人も少なくなっていく中で、これまでと同じ仕組みだけで、すべての地域の介護サービスを守り続けることは難しくなっています。

介護テクノロジーを活用する。働く人の負担を減らす。事業者同士が連携する。地域の実情に合わせて人員配置や報酬の仕組みを柔軟にする。それでも難しい地域では、市町村も関わりながらサービスを確保する。

こうした取組を重ねても、すべての地域で十分な介護サービスを維持できるとは限りません。人口減少という大きな変化の中では、制度だけでは解決できない課題も残ります。

それでも今回の改正は、「人口が減る地域だから仕方がない」とするのではなく、必要な介護を地域に残すために、できる方法を組み合わせていく方向へ制度の舵を切ったものと見ることができます。

参考資料・情報について

この記事は、2026年9月時点の厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律」に関する公表資料、社会保障審議会介護保険部会の資料などをもとに作成しています。

厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」
厚生労働省「第135回社会保障審議会介護保険部会」
厚生労働省「中山間・人口減少地域対応に関する議論の進め方」
厚生労働省「社会保障審議会(介護保険部会)」

この記事は2026年9月時点の情報です。
特定地域サービスの対象サービス、人員配置基準、包括的な評価の仕組みなどには、今後さらに具体化される内容が含まれます。制度の検討状況に応じて、記事の内容を更新する場合があります。

本記事の作成にあたっては、資料の整理、構成の検討、文章表現の補助などに生成AIを利用しています。

ただし、制度に関する記載については、厚生労働省の公表資料等を確認しながら作成しています。

更新履歴

2026年9月19日 公開

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