はじめに
介護や障害福祉、子育て支援など、私たちの暮らしを支える福祉サービス。その多くは、地域の社会福祉法人などによって支えられています。
一方で、人口減少や福祉人材の不足が進むなか、一つの法人だけですべてを担い続けることが難しい地域もあります。
そこで、複数の社会福祉法人などが、それぞれの独立性を保ちながら協力するための仕組みとして設けられているのが、「社会福祉連携推進法人」です。
2026年の社会福祉法等の改正では、この社会福祉連携推進法人が担える役割が広げられます。
そもそも社会福祉連携推進法人とは、どのような仕組みなのでしょうか。そして今回の改正によって、何が変わるのでしょうか。
この記事では、地域の福祉サービスを支える仕組みという視点から、今回の改正を分かりやすく見ていきます。
1.「社会福祉連携推進法人」って何?
「社会福祉法人」という名前は、介護施設や障害福祉施設、保育所などで目にしたことがあるかもしれません。
では、「社会福祉連携推進法人」とは何でしょうか。
名前は似ていますが、社会福祉法人そのものとは別の仕組みです。
社会福祉連携推進法人制度は、2022年4月に始まりました。複数の社会福祉法人などが「社員」として参加し、それぞれの法人としての独立性を保ちながら、一つの法人だけでは取り組みにくいことを共同で行うための仕組みです。
実際には、何を一緒にするの?
たとえば、同じ地域に、高齢者福祉を行う法人、障害福祉を行う法人、児童福祉を行う法人があるとします。
それぞれの法人が別々に職員を募集し、研修を行い、必要な物資を調達し、災害への備えをするのではなく、社会福祉連携推進法人を通じて、共同で取り組むことができます。
現在の制度では、社会福祉連携推進法人が行う「社会福祉連携推進業務」として、主に、地域福祉の推進、災害時の支援、経営支援、一定の資金の貸付け、人材の確保・育成、物資等の供給といった業務が位置づけられています。
たとえば、複数の法人が合同で職員を募集したり、職員研修を一緒に行ったりする。災害が起きたときに、職員の応援や利用者の受入れなどで協力できる体制を整えておく。物資を共同で調達したり、法人の経営について支援したりする。
つまり社会福祉連携推進法人は、「それぞれの法人が別々に行うより、一緒に取り組んだ方がよいこと」をつなぎ、連携・協働を進めていくための法人です。
法人を一つにまとめる制度ではありません
ここで大切なのは、参加する法人が一つの大きな法人に統合されるわけではないということです。
それぞれの法人は独立したままです。
「みんな同じ法人になる」のではなく、「それぞれの法人のまま、必要なところで力を合わせる」ための仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
そして、これまでの社会福祉連携推進法人には、大きな特徴がありました。
社会福祉連携推進法人自身は、社会福祉事業を行うことができなかったのです。
つまり、福祉サービスを直接提供することよりも、福祉サービスを提供する法人同士の連携を支えることが、これまでの基本的な役割でした。
ところが、2026年の社会福祉法等の改正では、この部分が見直されます。
一定の場合には、社会福祉連携推進法人自身が「第二種社会福祉事業」を行えるようになります。
では、なぜ今、福祉の法人同士がこれまで以上に連携し、地域の福祉サービスを支えていく必要があるのでしょうか。
次の章では、その背景を見ていきます。
2.なぜ福祉の法人同士が連携する必要があるの?
介護、障害福祉、子育て支援など、地域には暮らしを支えるさまざまな福祉サービスがあります。
しかし、人口減少が進む地域では、サービスを利用する人が減る一方で、そこで働く人を確保することも難しくなっていきます。
特に人口減少が進む地域などでは、利用者の減少や職員不足によって、一つの法人だけでは事業を続けることが難しくなる場合があります。
だからといって、その地域から福祉を必要とする人がいなくなるわけではありません。
利用する人の数が少なくなっても、高齢になって介護が必要な人、障害福祉サービスを必要とする人、子育ての支援を必要とする家庭などが暮らしています。
そこで考えられているのが、一つの法人だけですべてを抱えるのではなく、複数の法人が持っている人材や設備、経験などを生かしながら協力することです。
たとえば、一つの法人では十分な人数を集めにくい職員研修を合同で行う。人材の募集や育成を共同で行う。物資をまとめて調達する。災害時には法人同士で支援できる体制をつくる。
それぞれの法人が単独で同じことを行うのではなく、一緒にできるところは一緒に取り組むことで、それぞれの法人の負担を軽減し、経営基盤を支えていくという考え方です。
社会福祉連携推進法人は、こうした法人同士の「協働化」を進めるための選択肢の一つです。
ただ、法人同士が協力するだけでは、地域に必要な福祉サービスそのものを維持できない場合もあります。
そこで2026年の改正では、社会福祉連携推進法人の役割をさらに広げ、一定の場合には自ら「第二種社会福祉事業」を行えるようにする見直しが行われました。
では、この「第二種社会福祉事業」とは何なのでしょうか。
次の章では、社会福祉法で定められている「第一種社会福祉事業」と「第二種社会福祉事業」の違いから見ていきます。
3.「第一種」「第二種社会福祉事業」って何?
2026年の改正を理解するうえで、知っておきたいのが「第二種社会福祉事業」という言葉です。
社会福祉法では、「社会福祉事業」を第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の二つに分けています。
第一種社会福祉事業とは
第一種社会福祉事業は、利用者への影響が大きいため、経営の安定を通じて利用者を保護する必要性が高い事業です。
厚生労働省は、主として入所施設サービスがこれに当たると説明しています。経営主体についても、行政や社会福祉法人が原則となるなど、第二種より強い規制が設けられています。
たとえば、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、児童養護施設、障害者支援施設などを経営する事業が第一種社会福祉事業に含まれます。
利用者にとって施設そのものが生活の場になるものが多い、と考えるとイメージしやすいでしょう。
第二種社会福祉事業とは
一方、第二種社会福祉事業について、厚生労働省は、第一種と比べて利用者への影響が比較的小さく、公的規制の必要性が低い事業で、主として在宅サービスが該当すると説明しています。
たとえば、保育所の経営、ホームヘルプ、デイサービス、相談事業、障害児通所支援、障害児相談支援など、地域の暮らしに身近なサービスも含まれています。
ただし、「第一種の方が重要で、第二種はそれほど重要ではない」という意味ではありません。
福祉サービスの重要度を順位づけしたものではなく、事業の性質や利用者への影響などに応じて、経営主体や行政による規制のあり方を法律上区分しているものです。
なぜ今回、「第二種」が重要なの?
これまでの社会福祉連携推進法人は、複数の法人による人材確保や研修、経営支援などを行うことはできても、社会福祉連携推進法人自身が社会福祉事業を行うことはできませんでした。
ところが2026年の改正では、この仕組みが変わります。
一定の場合には、社会福祉連携推進法人自身が第二種社会福祉事業を行えるようになります。
つまり、これまでの「福祉サービスを提供する法人同士をつなぎ、支える」という役割から、一定の場合には、「社会福祉連携推進法人自身が、地域に必要な福祉サービスの担い手になる」ところまで、役割が広がることになります。
ただし、社会福祉連携推進法人であれば、自由に第二種社会福祉事業を始められるということではありません。
次の章では、2026年改正で社会福祉連携推進法人の何が変わるのかを、もう少し詳しく見ていきます。
4.2026年改正で何が変わる?――「連携する」だけでなく、サービスの担い手にも
これまでの社会福祉連携推進法人は、人材の確保や育成、経営支援、災害への備えなどを通じて、福祉サービスを提供する法人同士の連携・協働を支えることが中心でした。
社会福祉連携推進法人自身が、社会福祉事業を行うことはできませんでした。
2026年の改正では、この仕組みが大きく変わります。
地域に必要なサービスが足りない場合などに、第二種社会福祉事業を行えるように
改正後は、地域の福祉ニーズが十分に満たされていない場合など、サービスの提供体制を確保するため、社会福祉連携推進法人自身が第二種社会福祉事業を行えるようになります。
たとえば、地域では必要とされている福祉サービスがあるのに、それを担う事業者が十分にいない。あるいは、一つの法人だけでは新たな事業を始めたり、サービスを維持したりすることが難しい。
そのような場合に、これまで法人同士の連携を支えてきた社会福祉連携推進法人が、一定の要件のもとで、自らサービスの担い手になることができるようになるのです。
ただし、「社会福祉連携推進法人であれば、自由に第二種社会福祉事業を始められる」ということではありません。
厚生労働省の制度検討では、地域の福祉ニーズが満たされていないことや、他の事業者による参入が期待できないことなどを踏まえ、社会福祉連携推進法人による事業実施を認める仕組みが検討されてきました。また、認定所轄庁が要件への該当性や事業の安定性・継続性などを確認する仕組みも示されています。
つまり今回の改正は、社会福祉連携推進法人の事業を自由に拡大するためではなく、地域に必要な福祉サービスの提供体制を確保するための選択肢を増やすものと考えると分かりやすいでしょう。
土地や建物も、法人同士で生かしやすくする
もう一つの見直しが、社員である社会福祉法人同士の土地・建物等の貸付けを支援する仕組みです。
たとえば、ある社会福祉法人には活用できる建物がある一方で、別の社会福祉法人では、地域に必要な福祉サービスを続けるための場所を必要としていることがあります。
今回の改正では、こうした場合に、社会福祉連携推進法人が間に入り、社員である社会福祉法人間の土地・建物等の貸付けを支援できるようになります。
こうして見ると、今回の改正で社会福祉連携推進法人は、「法人同士が協力するための仕組み」というこれまでの役割に加えて、一定の場合には、「地域に必要な福祉サービスそのものを支える仕組み」としても活用できるようになります。
では、この制度の変更は、福祉サービスを利用する私たちの暮らしにどう関係するのでしょうか。
5.この改正は、私たちの暮らしにどう関係する?
「社会福祉連携推進法人」や「第二種社会福祉事業」と聞くと、福祉事業者のための制度で、自分たちの暮らしにはあまり関係がないように感じるかもしれません。
しかし、この改正が目指しているのは、地域で必要な福祉サービスの提供を維持・確保していくことです。
たとえば、高齢になって介護が必要になったとき、障害のある人が地域で暮らしていくとき、子育てをしながら生活していくときなど、私たちはさまざまな場面で福祉サービスを必要とすることがあります。
ところが、地域に必要とする人がいても、サービスを提供する事業者や働く人、事業を行う場所などを確保できなければ、そのサービスを続けることが難しくなる場合があります。
今回の改正では、そうした地域でのサービス提供体制を確保するため、一定の場合には社会福祉連携推進法人自身が第二種社会福祉事業を行えるようになります。また、地域の福祉サービスを維持するため、社員である社会福祉法人同士の土地・建物等の貸付けを支援する仕組みも加わります。
つまり、「必要なサービスはあるのに、担う事業者が十分にいない」「使える施設はあるのに、別の法人ではサービスを行う場所を確保できない」といった場合に、法人同士の連携や地域にある福祉資源を活用して、サービスを支えていくための選択肢が広がることになります。
もちろん、今回の制度改正だけで、人材不足や地域の福祉サービスをめぐる問題がすべて解決するわけではありません。
また、社会福祉連携推進法人が、地域の福祉サービスをすべて引き受ける仕組みになるわけでもありません。
今回の改正は、社会福祉連携推進法人の仕組みを生かしながら、地域に必要な福祉サービスを維持・確保するために、できることを広げるものと考えると分かりやすいでしょう。
私たちにとって大切なのは、制度の名前そのものではありません。
必要な支援が必要になったとき、暮らしている地域で福祉サービスを受けられること。
社会福祉連携推進法人制度の見直しは、そのための地域の福祉サービスを、これからどのように支えていくのかという問題につながっています。
補足――社会福祉法人が解散したときの財産も見直し
2026年の改正では、社会福祉連携推進法人の見直しとあわせて、社会福祉法人が解散した場合の「残余財産」の帰属先についても見直しが行われました。
「残余財産」とは、法人が解散し、債務などを整理したあとに残る財産のことです。
これまで、社会福祉法人が定款で残余財産の帰属先を定める場合には、社会福祉法人その他の社会福祉事業を行う者の中から選ぶ仕組みでした。今回の改正では、その帰属先として地方公共団体も選べるようになります。
背景には、法人が解散したあとも、残された土地や建物などを地域の福祉に生かしていくという考え方があります。
この見直しも、地域にある福祉の資源をできるだけ生かしながら、必要なサービスを支えていくという今回の改正の方向性につながっています。
まとめ――地域の福祉を、一つの法人だけで支えない仕組みへ
社会福祉連携推進法人は、複数の社会福祉法人などが、それぞれの独立性を保ちながら、人材の確保・育成、経営支援、災害への備え、物資の共同調達などに連携して取り組むための仕組みです。
これまでは、福祉サービスを提供する法人同士の連携を支えることが基本的な役割で、社会福祉連携推進法人自身が社会福祉事業を行うことはできませんでした。
2026年の社会福祉法等の改正では、この仕組みが広がります。
地域の福祉ニーズが十分に満たされていない場合など、一定の要件のもとで、社会福祉連携推進法人自身が第二種社会福祉事業を行えるようになります。
さらに、社員である社会福祉法人同士による土地・建物などの貸付けを支援する仕組みも加わります。
人口減少や福祉人材の確保が課題となるなか、一つの法人だけですべてを抱えるのではなく、それぞれの法人が持つ人材や施設、経験などを生かし、地域全体で必要な福祉サービスを支えていく。
今回の改正は、そのために社会福祉連携推進法人が担える役割を広げるものです。
私たちにとって大切なのは、制度の名前そのものではありません。
高齢になって介護が必要になったとき。
障害のある人が地域で支援を必要とするとき。
子育てをする家庭が支援を必要とするとき。
必要な福祉サービスが、必要なときに、暮らしている地域で利用できること。
社会福祉連携推進法人制度の見直しは、人口減少が進むこれからの地域で、そうした福祉サービスをどのように維持し、支えていくのかという課題につながっています。
参考資料・情報について
この記事は、2026年9月時点の制度と、厚生労働省が公表している社会福祉連携推進法人制度、社会福祉法、2026年の社会福祉法等の改正に関する資料をもとに作成しています。
厚生労働省「社会福祉連携推進法人制度」
厚生労働省「社会福祉法」
厚生労働省「第1種社会福祉事業と第2種社会福祉事業」
厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」
この記事は2026年9月時点の情報です。
2026年の法改正には、今後具体的な施行時期や運用が示されるものが含まれています。実際に制度を利用するときは、厚生労働省や都道府県、市区町村などが公表する最新情報をご確認ください。
本記事の作成にあたっては、資料の整理、構成の検討、文章表現の補助などに生成AIを利用しています。
ただし、制度改正に関する記載については、厚生労働省の公表資料等を確認しながら作成しています。
更新履歴
2026年9月20日 公開