暮らしと福祉 | WELFARE-018

災害時にも「福祉」を途切れさせないために

DWAT(災害派遣福祉チーム)と2026年改正

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はじめに

大きな災害が起きたとき、まず必要になるのは、命を守るための救助や医療、食料や水、避難する場所の確保です。

しかし、避難することができても、そのあとには避難生活が続きます。

高齢者や障害のある人、乳幼児など、普段の暮らしの中で支援や配慮を必要としている人にとっては、災害によっていつもの支援が途切れることが、その後の生活に大きな影響を与えることがあります。

介助してくれる人が来られない。
いつもの福祉サービスを利用できない。
慣れない避難生活の中で、これまでできていたことが難しくなる。

こうした災害時の「暮らし」を、福祉の専門性によって支える仕組みの一つが、DWAT(災害派遣福祉チーム)です。

令和6年能登半島地震では、DWATが全国規模で本格的に活動する一方、迅速な派遣や避難所の外にいる人への支援など、さまざまな課題も明らかになりました。こうした経験も踏まえ、2026年の社会福祉法等の改正では、災害時の福祉支援について、平時から人材を確保し、研修や訓練を行うための仕組みなどが整備されました。

この記事では、DWATの役割や能登半島地震で見えてきた課題、2025年の制度見直し、そして2026年改正で何が変わるのかを、「災害時にも福祉を途切れさせない」という視点から見ていきます。

1.災害が起きたとき、「福祉」の支援も必要になる

大きな災害が起きると、まず思い浮かぶのは、救助や医療、食料や水、避難する場所の確保かもしれません。

もちろん、どれも命を守るために欠かすことのできない支援です。

しかし、避難したあとも、人の暮らしは続きます。

避難所や自宅、車の中などで避難生活を送る人の中には、高齢者、障害のある人、乳幼児など、日常生活を送るうえで特別な配慮や支援を必要とする人もいます。

たとえば、慣れない環境で一人ではトイレに行くことが難しい、介助が必要なのに十分な支援を受けられない、障害の特性から大勢の人がいる避難所で過ごすことが難しい、といった問題が起こることがあります。

災害そのものから助かったとしても、避難生活の中で必要な福祉的支援を受けられなければ、生活機能が低下したり、要介護度が重くなったりすることがあります。

厚生労働省は、こうした避難生活による「二次被害」を防ぐことを、災害時の福祉支援における重要な課題としています。

そして大切なのは、「避難所にいる人」だけを考えればよいわけではないということです。

避難所だけでなく、自宅や車の中などで避難生活を送る人にも、必要な福祉支援を届けていくことが求められています。

つまり、災害時に必要なのは、「どこに避難しているか」だけではなく、「その人が生活を続けるために、どのような支援を必要としているのか」を見ることです。

救助や医療だけでは支えきれない、避難したあとの暮らし。そこを福祉の専門性によって支えるために活動するのが、DWATです。

2.DWAT(災害派遣福祉チーム)って何?

DWAT(ディーワット)は、Disaster Welfare Assistance Teamの略で、日本語では「災害派遣福祉チーム」と呼ばれています。

災害が起きたとき、避難生活を送る人の中には、介護が必要な高齢者、障害のある人、乳幼児など、福祉的な支援を必要とする人がいます。

こうした人たちの困りごとや福祉ニーズを把握し、必要な支援につなげたり、避難生活を続けられるよう環境を整えたりするのがDWATの役割です。

DWATは、一つの決まった組織から職員が派遣されるというより、平時から地域の福祉関係者がつながり、災害時に専門職がチームとなって活動する仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

都道府県では、社会福祉協議会、社会福祉施設等の関係団体、福祉職の職能団体などが参加する「災害福祉支援ネットワーク」が構築されています。そこに参加する団体や施設などから福祉の専門職が派遣され、DWATが編成されます。

チーム員には、たとえば社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャーなどの福祉専門職が含まれます。

DWATは、避難生活中の困りごとについての相談支援だけでなく、段差を解消したり、授乳できる場所を確保したり、食事やトイレの介助を行ったりするなど、福祉の専門性を生かした支援を行います。

災害発生後、避難所・在宅・車中などで避難生活を送る人の中から福祉的な支援が必要な人を把握し、DWATが相談・生活支援・環境調整・必要なサービスへのつなぎを行う流れ
DWATは、避難所だけでなく在宅や車中などで避難生活を送る人にも目を向け、必要な福祉支援につなぎます。

つまりDWATは、福祉の専門職が、災害時にもその人らしい生活をできるだけ維持できるよう支えるチームです。

3.DWATは災害現場で何をするの?

DWATは、単に「介護をするためのチーム」ではありません。

まず行うのは、避難生活を送っている人の中に、福祉的な支援を必要としている人がいないかを把握することです。

高齢者や障害のある人などについて、移動やトイレに介助が必要ではないか、食事をきちんと取れているか、避難生活によって心身の状態が悪くなっていないか、今いる場所で生活を続けることができるかなど、一人ひとりの状態や生活上の困りごとを確認します。

こうした確認は「アセスメント」と呼ばれ、その人にどのような支援が必要なのかを考えるための大切な作業です。

必要に応じて、食事や排せつなどの日常生活上の支援を行ったり、相談に応じたりします。また、段差を解消したり、授乳できるスペースを確保したりするなど、避難生活を送る環境そのものを整えることもDWATの仕事です。

そして、DWATだけですべてを解決するわけではありません。

より適切な環境での生活が必要な人を福祉避難所などにつないだり、自治体や福祉サービス事業者、保健・医療関係者などと情報を共有したりしながら、必要な支援へつないでいきます。

つまりDWATの役割は、困っている人を見つけ、その人に必要な福祉支援を考え、適切な支援につないでいくことです。

災害から命を守ったあと、その人の「生活」を守る。そこに、DWATが担う福祉支援の大きな意味があります。

4.能登半島地震で見えてきたこと

2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、DWATによるこれまでにない規模の支援活動が行われました。

この災害では、すべての都道府県からDWATが被災地に派遣され、全国規模で本格的な活動が行われました。

被災地では、避難生活を送る人の状態を確認し、福祉的な支援が必要な人を見つけ、必要なサービスや支援につなぐなど、さまざまな活動が行われました。

しかし、大規模な活動が行われたからこそ、課題も見えてきました。

その一つが、災害が起きた直後から、必要な場所へ迅速にDWATを派遣する体制です。

能登半島地震以前は、都道府県を越えてDWATを派遣した実績が少なく、発災直後から対応できるチームも限られていました。

また、避難所だけでなく、在宅避難者、車中泊避難者、被災した福祉施設などへの福祉的支援を強化する必要性も明らかになりました。

災害時にはDWATだけでなく、医療、保健、福祉など、それぞれの専門チームが被災地に入ります。そのため、互いに情報を共有し、役割を調整しながら支援する体制も重要です。

能登半島地震は、DWATが災害時の福祉支援に果たす役割を示すと同時に、災害が起きてから人を集めるだけではなく、平時から人材を確保し、訓練し、必要なときに速やかに動ける仕組みをつくっておく必要性を改めて示しました。

5.避難所だけではない――2025年に広がった災害時の福祉支援

令和6年能登半島地震で明らかになった課題を受けて、災害時の福祉支援は2025年にも大きく見直されました。

災害救助法に「福祉サービスの提供」が追加

災害救助法は、大きな災害が起きたときに、避難所の供与、食料や飲料水の提供、医療、被災者の救出など、被災者に対して行う「救助」の仕組みを定めている法律です。

2025年7月1日に施行された改正によって、この救助の種類に新たに「福祉サービスの提供」が加えられました。

これは、災害時に必要となる福祉的な支援を、救助の一つとして法律上明確に位置づけたものです。

DWATの支援も、避難所の外へ

DWATについても、能登半島地震での経験を踏まえて活動のあり方が見直されました。

現在は、避難所だけでなく、在宅や車中などで避難生活を送る要配慮者にも必要な福祉支援を届けることが明確になっています。

つまり、災害時の福祉支援は、「避難所という場所を支援する」ことから、「支援を必要としている人に福祉を届ける」ことへと広がってきました。

そして、この2025年の見直しのさらに先にあるのが、2026年の社会福祉法等の改正です。

6.2026年改正で何が変わる?――平時から支援できる体制へ

DWATは、2026年の改正によって初めて誕生するものではありません。

これまでも各都道府県でDWATの整備が進められ、災害時には福祉の専門職が被災地で活動してきました。しかし、これまでのDWATは、法律に直接規定された仕組みではなく、国の通知などをもとに運用されてきた仕組みでした。

そこで2026年の社会福祉法等の改正では、災害が起きてから対応するだけではなく、平時から災害時の福祉支援に備えるための仕組みが法律上整えられました。

DWATチーム員を国が登録

DWATとして活動する人は、法律上「災害時福祉業務従事者」として位置づけられ、その登録事務を国が行う仕組みになります。

研修・訓練を平時から行う

国には、災害時福祉業務従事者に対する研修と訓練を実施することが求められます。地域の事情に応じた補完的な研修などは、都道府県が担うことも想定されています。

勤務先にも派遣への配慮を求める

DWATのチーム員の多くは、普段は社会福祉施設や福祉事業所などで働いています。

改正では、都道府県知事からの派遣要請に応じてチーム員が災害時福祉業務に従事できるよう、派遣元の使用者に配慮を求める仕組みも設けられました。

必要な情報を適切に扱うための秘密保持義務

DWATが適切な支援を行うためには、介護の必要性や障害の特性、利用している福祉サービスなど、支援に必要な情報を扱う場合があります。

改正では、こうした情報を適切に入手・活用できるよう、災害時福祉業務従事者に秘密保持義務が設けられました。

つまり今回の改正では、誰が活動するのかを平時から登録する。必要な研修や訓練を行う。災害時に勤務先から送り出せるようにする。そして、必要な情報を適切に扱えるようにする。

こうした一連の仕組みを整えることで、災害が起きたときにDWATがより安定的・円滑に活動できる体制をつくることが目指されています。

7.災害福祉を、平時から地域でどう備えるの?

災害時の福祉支援を充実させるためには、DWATのチーム員を登録し、研修や訓練を行うだけでは十分ではありません。

実際に災害が起きたとき、「福祉的な支援を必要としている人はどこにいるのか」「誰がその人の状況を把握しているのか」「どの機関につなげれば必要な支援を受けられるのか」といったことを、その場で一から考えていては、支援が遅れてしまう可能性があります。

そのため重要になるのが、平時から地域の中で災害時の福祉支援について考え、関係者がつながっておくことです。

2026年の改正では、市町村地域福祉計画等の記載事項に災害福祉を加えるとともに、包括的な支援体制を整える際に連携へ配慮する分野として防災を加え、福祉と防災の連携を平時から進める仕組みが整えられました。

たとえば平時から、行政、社会福祉協議会、社会福祉施設、福祉関係団体などが連携し、災害が起きたときの役割や連絡方法を確認しておくことが考えられます。

また、DWATだけで災害時のすべての支援を担うわけではありません。災害現場では、医療、保健、福祉をはじめ、さまざまな分野の支援者が活動します。

誰がどのような役割を担い、必要な情報をどう共有し、支援を必要とする人をどこにつなぐのかを、平時から確認しておくことも大切です。

災害福祉とは、災害が起きたときだけ始まる支援ではありません。

普段の地域福祉のつながりを、災害時にも途切れさせないための備え。

2026年改正では、そのための体制づくりが地域福祉の仕組みの中にも位置づけられました。

8.DWATや今回の改正は、私たちの暮らしにどう関係する?

DWATは、災害が起きたときに活動する専門チームです。そのため、普段の暮らしの中では、あまり身近に感じることがないかもしれません。

しかし、災害は、それまで受けていた介護や障害福祉などの支援を突然途切れさせることがあります。

いつも利用している事業所が被災する。介助してくれる人が来られなくなる。必要な福祉用具を使えなくなる。慣れない避難生活によって、これまでできていたことが難しくなる。

特に、高齢者や障害のある人、乳幼児など、日常生活の中で何らかの配慮や支援を必要としている人にとって、「避難できたこと」と「避難生活を続けられること」は同じではありません。

だからこそDWATには、災害から助かった命を、その後の「暮らし」につないでいく役割があります。

そして、この支援は避難所だけのものではありません。在宅や車中などで避難生活を送る要配慮者にも、必要な福祉支援を届けることが求められています。

2026年改正によって進められるのは、災害が起きてから「誰か支援できる人はいないか」と探すのではなく、平時から支援する人を登録し、研修や訓練を行い、必要なときに動ける体制をつくっておくことです。

今は支援を必要としていなくても、災害によってけがをしたり、避難生活が長期化したりすることで、誰もが生活上の支援を必要とする可能性があります。

災害時にも、必要な人に必要な福祉支援が届く地域をつくっておくこと。それは、誰もが被災したあとも生活を続けていくための備えの一つといえるでしょう。

9.まとめ――命を守った、その先の暮らしを支える

災害が起きたとき、まず必要になるのは、命を守るための救助や医療、食料や水、避難する場所の確保です。

しかし、災害を生き延びたあとも、人の暮らしは続きます。

高齢者や障害のある人、乳幼児など、日常生活の中で支援や配慮を必要とする人にとっては、避難したあとも必要な福祉支援を受けられることが、その後の生活を守るうえでとても重要です。

そのような災害時の福祉を支える仕組みの一つが、DWAT(災害派遣福祉チーム)です。

DWATは、福祉的な支援を必要としている人を見つけ、一人ひとりの状態や困りごとを確認し、必要な支援につなぎます。

2025年には災害救助法の救助の種類に「福祉サービスの提供」が加わり、DWATの活動も避難所だけでなく在宅や車中などへ広がりました。

さらに2026年の社会福祉法等の改正では、DWATのチーム員となる災害時福祉業務従事者を国が登録し、研修や訓練を行うこと、勤務先が派遣に配慮すること、秘密保持義務を設けることなど、平時から災害に備えるための仕組みが法律に位置づけられました。

また、市町村地域福祉計画等に災害福祉を位置づけるとともに、福祉と防災の連携を平時から進める仕組みも整えられました。

災害は、いつ、誰の暮らしを変えるか分かりません。

命を守ったその先の「暮らし」も守ること。

そして、災害が起きてから支援を考えるのではなく、普段から地域の中で人と人、福祉と防災をつないでおくこと。

DWATと今回の制度改正は、災害時にも必要な福祉を途切れさせないための、その大切な備えの一つです。

参考資料・情報について

この記事は、2026年9月時点の制度と、厚生労働省が公表している災害時の福祉支援、DWAT、災害救助法、2026年の社会福祉法等の改正に関する資料をもとに作成しています。

厚生労働省「災害時における福祉支援体制の整備等」
厚生労働省「災害に備えた福祉支援体制等について」
厚生労働省「災害救助法」
厚生労働省「社会保障審議会福祉部会報告書(概要)(令和7年12月18日)」
厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」

この記事は2026年9月時点の情報です。
2026年の法改正には、今後、施行に向けて具体的な運用が示されるものが含まれています。実際の制度や支援を確認するときは、厚生労働省や都道府県、市区町村などが公表する最新情報をご確認ください。

本記事の作成にあたっては、資料の整理、構成の検討、文章表現の補助などに生成AIを利用しています。

ただし、制度改正に関する記載については、厚生労働省の公表資料等を確認しながら作成しています。

更新履歴

2026年9月20日 公開

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