暮らしと福祉 | WELFARE-011

成年後見制度だけではない「権利擁護」の支援

自分らしい暮らしを守るためのさまざまな仕組み

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「権利擁護」って、成年後見制度のこと?

「権利擁護」と聞くと、成年後見制度を思い浮かべる方も多いかもしれません。

認知症や障害などによって判断することに不安が生じたとき、成年後見制度は本人の権利や財産を守るための大切な仕組みの一つです。

しかし、権利擁護の支援は、成年後見制度だけではありません。

本人の意思を確認しながら選択を支えること、福祉サービスの利用を支援すること、日常的なお金の管理を支えること、権利侵害が生じたときに必要な支援につなぐことなども、権利擁護という大きな考え方の中にあります。

この記事では、成年後見制度だけに限らず、一人ひとりの意思や権利を大切にしながら、その人らしい暮らしを支える「権利擁護支援」について見ていきます。

1.そもそも「権利擁護」って何?

「権利擁護」という言葉は、少し難しく聞こえるかもしれません。けれども、その考え方は私たちの暮らしにとても身近なものです。

「できるだけ今の家で暮らしたい」「この福祉サービスを利用したい」「自分のお金は、自分が望むことのために使いたい」「施設に入るとしても、自分の希望を聞いてほしい」。

こうした一人ひとりの思いや選択が大切にされ、その人らしい生活を続けられるように支えることも、権利擁護の大切な役割です。

厚生労働省の第二期成年後見制度利用促進基本計画では、権利擁護支援の目的として、「尊厳のある本人らしい生活の継続」と「地域社会への参加」を掲げています。

つまり、権利擁護は単に財産を守ったり、契約の手続きを代わりに行ったりすることだけではありません。

本人がどのように暮らしたいのかを大切にし、その人ができるだけ自分で選び、決めながら生活していけるよう支えることも含まれます。

一方で、認知症や障害などによって自分の希望を伝えることが難しくなったり、必要のない契約をしてしまったり、お金を不当に使われたり、虐待などによって安全な生活が脅かされたりすることもあります。

こうしたときには、本人の意思を大切にしながら、権利の侵害を防いだり、すでに侵害されている権利を回復したりする支援が必要になります。

「本人のために、周りの人が決める」ことと、「本人が決めることを支える」ことは同じではありません。

そこで重要になるのが、次に紹介する「意思決定支援」という考え方です。

2.「本人のために決める」から「本人が決めることを支える」へ

私たちは誰でも、何を食べるのか、どこで暮らすのか、どのようなサービスを利用するのか、誰と付き合い、どのようにお金を使うのかなど、日々さまざまなことを自分で選びながら暮らしています。

一つひとつは小さな選択に見えても、その積み重ねが「その人らしい暮らし」をつくっています。

これは、認知症や障害などによって判断することに支援が必要になっても、変わるものではありません。

意思決定支援とは

意思決定支援では、本人に代わって周囲がすぐに答えを決めるのではなく、まず本人自身が意思を形成し、それを表明し、できるだけその意思を実現できるよう支えていきます。

たとえば、説明の仕方を工夫する、選択肢を少しずつ示す、写真や実物を使う、本人をよく知る人から普段の様子を聞く、体調が悪いときには急いで決めず別の日にもう一度確認する、といった工夫も意思決定支援につながります。

ここで大切なのは、「一人で決めること」と「自分で決めること」は同じではないということです。

誰かに説明してもらったり、一緒に考えてもらったりして決めたとしても、最後に大切にされるのが本人の意思であれば、それも本人自身の意思決定です。

本人の意思を確認することが非常に難しい場合にも、これまでどのような生活をしてきたのか、何を大切にしてきたのか、何を好み、何を嫌がっていたのかなどを手がかりに、その人の意思をできる限り丁寧に考えていきます。

「何ができないか」だけを見るのではなく、「どのような支援があれば本人が決められるのか」を考える。

3.その人に必要な「権利擁護支援」を考える

権利擁護の支援には、さまざまなものがあります。

日常生活のお金の管理を支えること、福祉サービスを利用するための手続きを支援すること、本人が自分の希望を伝え、選ぶことができるよう意思決定を支えること。そして、必要な場合には成年後見制度などによって、法律上の権限をもつ人が本人を支えることもあります。

大切なのは、これらを単純に「まずは軽い支援を使い、それで足りなくなったら成年後見制度を使う」という順番だけで考えないことです。

本人が何に困っているのかによって、必要となる支援の役割が異なるからです。

日常生活を支える仕組み

福祉サービスの利用手続きや日常的な金銭管理などについて支援が必要な場合には、日常生活自立支援事業などを利用できることがあります。

一方で、本人の権利を守るために法律上の代理権などが必要になる場合には、こうした生活支援だけでは対応できないことがあります。そのような場面では、成年後見制度による支援が重要になります。

つまり、日常生活自立支援事業などは、成年後見制度の単なる「代わり」ではありません。成年後見制度もまた、本人の権利を守るために必要となることのある、大切な権利擁護支援の一つです。

日常生活自立支援事業や、2026年改正で広がる福祉サービス利用援助事業については、WELFARE-005「福祉サービス利用援助事業って、どんな制度?」で詳しく紹介しています。

「成年後見制度を使わずに済ませるにはどうするか」ではなく、「本人の権利と暮らしを守るために、どのような支援が必要なのか」から考えることが大切です。

4.成年後見制度も、権利擁護支援の一つ

本人の権利を守るために、法律上の支援が必要になる場合もあります。そのようなときに重要な役割を担うのが、成年後見制度です。

成年後見制度では、本人の状況に応じて成年後見人等が選任され、財産管理や契約などについて、法律上の権限に基づいた支援を行います。

これは、日常生活の支援や見守りなどでは代わることのできない、成年後見制度だからこそ担える役割です。

一方で、成年後見制度を利用すれば、その人の暮らしに必要なすべての支援が一つの制度で完結するわけではありません。医療や介護、福祉サービス、日々の生活支援、意思決定支援など、その人の状況に応じてさまざまな支援が関わります。

成年後見制度の仕組みや、法定後見制度・任意後見制度との違いについては、WELFARE-005の記事内でも詳しく比較しています。

5.一人を「チーム」と「地域」で支える権利擁護へ

権利擁護支援は、一人の専門家だけで完結するものではありません。

本人が抱えている困りごとは、生活、医療、介護、お金、契約、住まいなど、いくつもの分野にまたがることがあります。

そのため、本人の状況によっては、福祉の支援者、医療や介護の関係者、行政、成年後見人等、弁護士・司法書士・行政書士などの法律に関わる専門職をはじめ、異なる立場や専門性をもつ人たちがチームとなって支えることが重要になります。

意思決定支援も「チーム」で考える

本人のことを日頃からよく知っている人だから分かることがあります。医療や介護の専門家だから分かることもあります。法律上の問題については、それぞれの業務範囲に応じた専門的な視点が必要になる場合もあります。

それぞれが持っている情報や専門的な視点を持ち寄りながら、本人が何を望んでいるのか、どのような支援があれば本人自身が決めることができるのかを一緒に考えていきます。

ここで大切なのは、専門家が集まって「本人にとって一番よいことを決めてあげる」ためのチームではないということです。

中心にいるのは、あくまで本人です。

本人が理解しやすいように説明する。本人が考えるための時間を確保する。本人の言葉だけではなく、表情やこれまでの生活、本人が大切にしてきたことなども丁寧に確認する。そして、それぞれの専門的な立場から本人の意思決定を支えていきます。

本人を中心に、福祉・医療・介護・法律・成年後見・行政などの多職種による支援チームと、地域の権利擁護支援ネットワークが支える仕組み
本人を中心に、多職種の支援チームと地域連携ネットワークが支える権利擁護支援

支援チームを支える「地域のネットワーク」

こうした支援チームが孤立しないために必要になるのが、地域の仕組みです。

一つのチームだけでは解決することが難しい問題について相談したり、必要な専門職につないだり、新たな支援を加えたりする。そのために、福祉、行政、司法、医療、介護などが地域の中でつながる「権利擁護支援の地域連携ネットワーク」が重要になります。

2026年の社会福祉法等の改正では、こうした地域の権利擁護支援を支える仕組みとして、「地域権利擁護相談支援センター」を設置できることも法律に位置づけられました。

地域権利擁護相談支援センターの役割については、WELFARE-009「地域権利擁護相談支援センターって、どんなところ?」で詳しく紹介しています。

まとめ|「本人を守る」だけではなく、「本人と一緒に考える」権利擁護へ

「権利擁護」という言葉を聞くと、成年後見制度など、法律によって本人を守る仕組みを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、本人の権利や財産を守るために、成年後見制度による支援が必要になることがあります。しかし、権利擁護支援はそれだけではありません。

本人が自分の希望を伝えられるように支えること。必要な情報を分かりやすく伝え、本人が選ぶことのできる環境を整えること。日常生活や福祉サービスの利用を支えること。そして、必要に応じて福祉、医療、介護、行政、法律など、さまざまな分野の支援者がつながること。

こうした支援も、その人の権利と暮らしを守ることにつながっています。

大切なのは、「本人のために何を決めるか」だけではなく、「本人が何を望んでいるのか」を出発点にすることです。

一人で決めることが難しくなったとしても、支援があれば自分で決められることがあります。そのために、本人を中心として、必要に応じてさまざまな専門職や支援者がチームとなり、それぞれの専門性を持ち寄りながら意思決定を支えていきます。

そして、その支援チームを孤立させず、必要な制度や専門職につなぐために、地域の連携ネットワークがあります。

本人を中心に、支援する人がつながり、その人らしい暮らしを支えていく。

成年後見制度、福祉サービス、意思決定支援、地域の相談支援。それぞれには異なる役割があり、どれか一つですべてを担うものではありません。

権利擁護とは、特別な制度の名前ではなく、一人ひとりの意思と権利を大切にしながら、その人らしく暮らしていくことを支えるための考え方なのです。

参考資料・情報について

この記事は、2026年9月時点の厚生労働省「第二期成年後見制度利用促進基本計画」、意思決定支援に関する公表資料、社会福祉法等の改正に関する公表資料などをもとに作成しています。

厚生労働省「成年後見制度利用促進」
厚生労働省「成年後見はやわかり」
厚生労働省「地域における権利擁護の支援体制に係るワーキング・グループ」関係資料

この記事は2026年9月時点の情報です。
権利擁護支援や成年後見制度をめぐる制度・運用については、今後の検討や法令の施行等により内容が変わる可能性があります。

本記事の作成にあたっては、資料の整理、構成の検討、文章表現の補助などに生成AIを利用しています。

ただし、制度に関する記載については、厚生労働省の公表資料等を確認しながら作成しています。

更新履歴

2026年9月18日 公開

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