導入|ケアマネジャーに、どこまでお願いしていい?
前編では、ケアマネジャーとはどのような専門職なのか、どこに相談し、ケアプランをどのように作っていくのかを見てきました。
この記事でいう「ケアマネジャー」は、前編と同じく、介護保険制度の介護支援専門員を指します。
では、実際の暮らしの中では、ケアマネジャーにどこまで相談してよいのでしょうか。
特に、頼れる家族や親族がいない場合には、
「入院するときの手続きを手伝ってほしい」
「緊急連絡先になってほしい」
「お金や書類の管理が心配」
「亡くなった後のことを頼める人がいない」
といった、介護サービスだけでは解決できない困りごとが出てくることがあります。
そして、適切な相談先や支援先が見つからないと、日頃から本人を支えているケアマネジャーに、こうしたさまざまな相談や対応が集まることがあります。
しかし、ケアマネジャーは「家族の代わりに何でもしてくれる人」ではありません。
大切なのは、相談することをためらうことではなく、その困りごとは誰が、どの制度や支援で受け止めることができるのかを一緒に考えていくことです。
この記事では、ケアマネジャーの役割とその周辺に集まりやすい「シャドウワーク」、頼れる身寄りがいない高齢者等を地域で支える新しい仕組み、ケアマネジャーの負担や人材確保の課題、そして2026年の法改正による制度の見直しについて見ていきます。
1.ケアマネジャーは「何でもしてくれる人」ではありません
ケアマネジャーには、介護についてさまざまなことを相談できます。
本人の身体の状態だけではなく、
「一人暮らしを続けるのが不安」
「買い物や食事の準備が難しくなった」
「退院したあと、自宅で生活できるか心配」
「家族だけでは介護を続けられない」
といった生活上の困りごとも、まず相談してかまいません。
ただし、ここで区別しておきたいことがあります。
「ケアマネジャーに相談できること」と、「ケアマネジャー自身がその仕事をすべて行うこと」は同じではありません。
ケアマネジャーの中心的な役割は、本人の心身の状態や生活環境、希望などを把握し、必要な支援を考えてケアプランを作成し、介護サービス事業者や関係機関との連絡・調整を行い、その後の生活やサービスの状況を継続して確認していくことです。
そのため、生活上の困りごとについて相談を受けた場合でも、ケアマネジャー自身がすべてを直接行うのではなく、介護サービスや地域の相談機関、福祉制度、医療機関など、必要な支援につなぐことが重要な役割になります。
たとえば、入院に関する手続きや日常的なお金の管理、緊急連絡先、亡くなった後の手続きなどは、状況によって介護保険以外の制度や支援を検討する必要があります。
だからといって、利用者自身が最初から、
「これはケアマネジャーの仕事ではないから、相談してはいけない」
と判断する必要はありません。
まず困っていることを伝え、その内容に応じて、誰がどのように支援するのがよいのかを整理していく。
その入口としてケアマネジャーに相談することには、大きな意味があります。
2.身寄りがないと、誰が担う?――ケアマネジャーに集まる「シャドウワーク」
高齢になっても、家族や親族が近くにいて、必要なときに支援を受けられる人ばかりではありません。
一人暮らしの人だけの問題でもありません。
親族がいても遠方に住んでいたり、関係が疎遠だったり、親族自身も高齢であったりするなど、実際には支援を頼むことが難しい場合があります。
そのため、厚生労働省では単に「身寄りがない」という表現だけではなく、「頼れる身寄りがいない高齢者等」という考え方で支援の仕組みを検討してきました。
こうした場合に問題になりやすいのが、これまで家族や親族が担ってきたさまざまな対応です。
たとえば、
入院や施設入所に伴う手続き
緊急時の連絡への対応
日常生活上の細かな用事
金銭や書類に関する手続き
亡くなった後の葬儀や納骨、家財の処分など
といった問題です。
家族に頼ることができず、さらに地域の中で「この問題はここに相談すればよい」という支援先がはっきりしていないと、日頃から本人と関わっているケアマネジャーなどに相談や対応が集まることがあります。
こうした、本来のケアマネジメントの範囲を超えてケアマネジャーなどが対応せざるを得なくなっている業務について、厚生労働省の検討資料では「いわゆるシャドウワーク」という言葉が使われています。
問題は「ケアマネジャーが余計なことをしている」ことではありません
「シャドウワーク」という言葉だけを見ると、ケアマネジャーが本来しなくてもよい仕事まで引き受けている、という問題のように感じるかもしれません。
しかし、より重要なのは、本人が実際に困っているのに、その困りごとを受け止める適切な支援先が地域の中で明確になっていない場合があるということです。
頼れる家族や親族がいなければ、その問題を誰かが担わなければ生活そのものが成り立たないこともあります。
その結果、本人と継続的に関わっているケアマネジャーが対応せざるを得なくなることがあります。
だから必要なのは、単に、
「これはケアマネジャーの仕事ではありません」
と線を引いて終わることではありません。
「この困りごとは、地域の誰が、どの制度や支援で受け止めるのか」を明確にしていくことです。
頼れる身寄りがいない人が直面する生活上の問題については、 「頼れる身寄りがいない人を、社会でどう支える?|2026年改正で変わる相談と支援のしくみ」 でも詳しく取り上げています。
そして2026年の法改正では、こうした問題をケアマネジャーなど個々の支援者だけに背負わせるのではなく、社会の仕組みとして支えるための制度整備が進められました。
次の章では、頼れる身寄りがいない高齢者等を地域で支える新しい仕組みについて見ていきます。
3.身寄りのない高齢者を、ケアマネジャーだけに任せない仕組みへ
頼れる家族や親族がいない人の生活上の困りごとを、ケアマネジャーなど個々の支援者だけに任せるのではなく、地域や社会の仕組みとして支えていく。
そのための制度整備が、2026年の社会福祉法等の改正に盛り込まれました。
改正では、頼れる身寄りがいない高齢者等に対して、
日常生活を支えること
入院や施設入所などに必要な手続きを支えること
亡くなった後の事務を支えること
などの支援を、利用者のうち一定割合以上に無料または低額の料金で提供する事業が、新たに社会福祉法上の第二種社会福祉事業として位置づけられます。
あわせて、こうした支援を必要とする人を適切な支援につなぐため、相談支援の仕組みも整備されます。
新しい仕組みは、「ケアマネジャーを家族代わりにする制度」ではありません
ここは、この改正を考えるうえで大切なところです。
頼れる家族や親族がいないからといって、入院や入所の手続き、日常生活上のさまざまな支援、亡くなった後のことまで、ケアマネジャーがすべて担う仕組みにするわけではありません。
むしろ、これまで支援先がはっきりせず、ケアマネジャーなどに集まりやすかった困りごとについて、それぞれの役割を整理し、適切な支援につなげられる地域の仕組みをつくっていくことが重要になります。
ケアマネジャーは、本来の専門性であるケアマネジメントを担う。
介護サービスで支えることは、介護サービスにつなぐ。
そして、介護保険だけでは対応できない生活上の問題については、その内容に応じた制度や支援につないでいく。
このように、本人を中心として、それぞれの専門職や制度が役割を分担しながら支えていくことが大切です。
この新しい支援の内容については、 「福祉サービス利用援助事業って、どんな制度?|2026年改正で広がる日常生活・入院入所・死後の支援」 で詳しく解説しています。
なお、この新しい支援事業に関する改正は、2026年の法改正に盛り込まれましたが、公布と同時にすべてが始まるわけではありません。
この部分は、公布の日から2年以内の政令で定める日に施行されることとされています。
そのため、実際にどのような事業者が支援を担うのか、地域でどのような相談・連携体制が整えられるのかなどについては、今後の具体的な制度運用も確認していく必要があります。
こうした仕組みづくりが求められている背景には、身寄りのない高齢者等の増加だけではなく、ケアマネジャー自身を取り巻く厳しい状況もあります。
次の章では、なぜ今、ケアマネジャーの負担や人材確保が大きな課題になっているのかを見ていきます。
4.なぜ今、ケアマネジャーの負担が問題になっているのか
ケアマネジャーは、在宅で介護を受ける人の生活を支えるうえで、重要な役割を担っています。
しかし、その重要性が高まる一方で、ケアマネジャーを十分に確保できるのかという問題が大きくなっています。
厚生労働省の検討でも、ケアマネジャーの従事者数は近年、横ばいから減少傾向にあり、今後の高齢化や介護需要を考えると、人材の確保が重要な課題とされています。
2026年に厚生労働省が公表した自治体への調査についても、ケアマネジャーの確保状況を尋ねたところ、およそ2割の自治体が「大きく不足している」と回答したことが示されています。
ケアマネジャーの仕事は、ケアプランを作るだけではありません
ケアマネジャーの仕事というと、「ケアプランを作る仕事」という印象があるかもしれません。
しかし実際には、本人や家族との面談、生活状況や心身の状態の把握、ケアプランの作成、サービス事業者との連絡・調整、サービス担当者会議、モニタリング、必要な記録や書類の作成など、さまざまな業務があります。
さらに、本人の生活課題が複雑になれば、医療機関、介護事業者、市区町村、地域包括支援センター、そのほかの支援機関など、多くの関係者との調整が必要になることもあります。
そこに、前の章で見たような、支援先が明確でない生活上の困りごとへの対応まで重なれば、ケアマネジャーの負担はさらに大きくなります。
必要なのは、ケアマネジャーが専門性を発揮できる環境です
ケアマネジャーの負担を考えるとき、単純に「仕事を減らせばよい」というだけではありません。
大切なのは、ケアマネジャーが本来の専門性であるケアマネジメントに、より力を注ぐことができる環境をつくることです。
そのため、厚生労働省では、業務の整理や役割分担、ICTの活用、書類や事務負担の軽減などを進めるとともに、ケアマネジャーが担うべき業務と、地域のほかの支援者や制度が担うべき業務を整理していく必要があるとしています。
身寄りのない高齢者等への支援についても、その一つです。
地域の中に適切な支援先が整えば、本人にとっては必要な支援につながりやすくなり、同時に、ケアマネジャーが一人でさまざまな問題を抱え込むことを防ぐことにもつながります。
つまり、ケアマネジャーの人材不足や負担の問題は、単に「ケアマネジャーの人数を増やせば解決する」という問題ではありません。
限られた人材が専門性を発揮できるように、仕事のあり方そのものを見直していくことも必要になっています。
そして、その見直しの一つとして2026年の法改正に盛り込まれたのが、ケアマネジャーの資格更新と法定研修に関する制度の見直しです。
次の章では、「ケアマネジャーの更新制が廃止される」とは、具体的に何が変わるのかを見ていきます。
5.ケアマネジャー制度はこれからどう変わる?――更新制廃止と研修の見直し
ケアマネジャーの人材確保や負担軽減を考えるなかで、2026年の法改正では、介護支援専門員の資格に関する制度も見直されることになりました。
大きな変更の一つが、介護支援専門員証の更新の仕組みの廃止です。
現在は、研修の受講と資格の更新が結び付いています
現行制度では、介護支援専門員証には有効期間があり、更新するためには、原則として所定の研修を受講する仕組みになっています。
こうした仕組みは、研修を通じて専門的な知識や技術を維持・向上させることを目的として設けられてきました。
一方で、ケアマネジャーからは、研修を受講するための時間的・経済的な負担が大きいという声もありました。
そこで2026年の法改正では、ケアマネジャーの資質を確保・向上させることを前提としながら、こうした負担をできるだけ軽減する方向で制度が見直されます。
「更新制廃止」=「研修がなくなる」ではありません
ここは、今回の改正で特に誤解しやすいところです。
改正によって廃止されるのは、研修を受講することを資格更新の要件とする仕組みです。
研修そのものがなくなるわけではありません。
ケアマネジャーには、介護保険制度の変更、医療と介護の連携、認知症への支援など、新しい知識や技能を継続して身につけていくことが求められます。
そのため、更新の仕組みを廃止した後も、専門職として必要な知識や技能を学び続けるための研修は重要なものとして位置づけられます。
研修の負担を軽くし、学びやすくする見直しも進められます
更新制の廃止とあわせて、法定研修のあり方についても見直しが進められています。
これまでの検討では、研修内容を整理するとともに、分割して受講しやすくすることや、オンラインを活用することなど、仕事を続けながら学びやすい仕組みにしていく方向が示されています。
また、ケアマネジャー本人だけに研修受講の負担を求めるのではなく、働きながら必要な研修を受けられる環境を整えていくことも重要になります。
ただし、今後の研修を「何年ごとに、どの研修を、どのように受けるのか」といった具体的な運用については、今後の制度設計や関係する省令・通知などを確認する必要があります。
したがって、現時点では、「更新制がなくなるから、今後は研修を受けなくてよい」と考えるのは適切ではありません。
いつから変わるの?
2026年の法改正には複数の制度改正が含まれており、すべてが同じ日に始まるわけではありません。
ケアマネジャーの更新制廃止と法定研修の見直しについては、公布の日から1年6か月以内の政令で定める日に施行されることとされています。
そのため、「2027年4月1日から一律に更新制がなくなる」と決めつけることはできません。
実際にいつから新しい仕組みに移行するのか、また施行前後の資格や研修をどのように扱うのかについては、今後示される政令や厚生労働省からの案内を確認する必要があります。
今回の見直しで重要なのは、単に更新手続きをなくすことではありません。
ケアマネジャーの専門性を維持しながら、研修などの負担を見直し、働き続けやすい環境につなげていくことが制度改正の大きな目的の一つです。
おわりに――困ったときは、まず相談する
ケアマネジャーは、介護が必要になった人の生活を支えるうえで、とても重要な専門職です。
しかし、家族の代わりになって、生活上のあらゆることを一人で引き受ける人ではありません。
特に、頼れる身寄りがいない場合には、介護サービスだけでは解決できないさまざまな問題が起こることがあります。
だからこそ、本人が、
「これはケアマネジャーに相談していいことなのだろうか」
と一つひとつ判断し、相談をためらう必要はありません。
まず、困っていることを伝える。
そのうえで、ケアマネジャーが担うことなのか、介護保険サービスで支えることなのか、それとも別の制度や地域の支援につなぐ必要があるのかを一緒に整理していけばよいのです。
頼れる家族や親族がいない人の問題も、本人や一人のケアマネジャーだけに背負わせるものではありません。
「家族がいないから、仕方がない」ではなく、「では、どの支援につなげられるのか」を考える。
そのための地域の仕組みを整えていくことが、これからますます重要になります。
ケアマネジャーの基本的な役割や、介護が必要になったときの相談先、ケアプランの作り方などについては、前編 「ケアマネジャーとは?【前編】――介護が必要になったとき、何を相談し、どんな支援を受けられるのか」 で詳しく解説しています。
参考資料・情報について
この記事は、2026年9月時点の制度と、厚生労働省が公表している社会福祉法等の改正、介護支援専門員の業務や人材確保、法定研修の見直しなどに関する資料をもとに作成しています。
厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」
厚生労働省「頼れる身寄りがいない高齢者等・判断能力が不十分な者を対象とする第二種社会福祉事業の新設」
厚生労働省「介護支援専門員の法定研修等」
厚生労働省「ケアマネジャーの更新制・法定研修の見直し」
厚生労働省「上野大臣会見概要(令和8年7月3日)」
厚生労働省「介護保険法」
厚生労働省「介護保険法施行規則」
この記事は2026年9月時点の情報です。
2026年の法改正には、公布後に政令で施行日が定められる制度や、今後具体的な運用が示されるものが含まれています。実際に制度を利用するときや、ケアマネジャーの資格・研修に関する手続きを行うときは、厚生労働省や都道府県、市区町村などが公表する最新情報をご確認ください。
本記事の作成にあたっては、資料の整理、構成の検討、文章表現の補助などに生成AIを利用しています。
ただし、制度改正に関する記載については、厚生労働省の公表資料等を確認しながら作成しています。
更新履歴
2026年9月20日 公開